蛇男 THE SNAKE


監督:エリック・バルビエ
キャスト:イヴァン・アタル、クロヴィス・コルニアック、オルガ・キュリレンコ、ピエール・リシャール、サイモン・アブカリアン
2006年 フランス

あらすじ:フォトグラファーのヴァンサンは妻と離婚協議中。そのヴァンサンを鋭い眼光で睨みつける黒い影、プレンデール。プレンデールは謎の女ソフィアをモデルとしてヴァンサンの事務所に送りこみ、彼を誘惑させる。そしてプレンデールは彼女を仕組んで殺し、ヴァンサンを殺人犯に仕立てあげる。無実を証明するために逃亡し、弁護士を立て反撃に出るが、プレンデールは裏をかき、蛇の如くじっくりと獲物を追いつめ、締めつけていく─。

評価 ★★★★☆

 タイトルはもうちょっとなんとかできなかったんだろうか。「蛇男」て。江戸川乱歩の小説か楳図かずおの漫画にでもありそうなタイトル。
 どう考えてもB級ホラーを連想してしまう。中身は上質なサスペンス映画なんだけど、タイトルで損してるよ。とかいいながらオイラはB級映画かと思って興味を持ったんだけどね。そこら中にある原題通りのカタカナ英語のタイトルよりも好感は持てちゃったりはする。

 内容はフランスの二大スター(?)が共演したクライムサスペンス。さすが、どっちも貫禄のある演技で見応え充分。
 主人公のイヴァン・アタルのほうは雰囲気がジャン・レノに似てる。眠たそうな目してるのも一緒だし。
 ヒロインはエロイ姿を見せてくれるけど、すぐに死んじゃうのが難。

イヴァン・アタル
クロヴィス・コルニアック


 英国人作家デッド・ルイスの「PLENDER」の映画化。ヒット小説なわけでストーリーは非常に良くできている。序盤の展開なんて神がかってる。仕掛けられて罠に落ちていく主人公。見ている側はそれが罠だと分かっているけど、主人公はそんなの分からない。思わず逃げて、と叫びたくなるようなハラハラドキドキ感。適度に意外性のある出来事を挟んで、先の展開が気になって目が離せなくなる。

 犯人の私立探偵。こいつが主人公の自宅で、中学校時代のイタズラを妻の前で笑い話にするシーンは圧巻。後の伏線にもなってるし、内包された狂気が画面の中からヒシヒシと伝わってくる。憎悪を腹の底に溜めて表面では笑っている。怖い怖い。

 で、この犯人の動機が中学校時代のイタズラが原因と分かっちゃってからちょっと盛り下がる。だって主人公に感情移入できなくなるから。自業自得じゃん、と思ってしまう部分もある(だからってこんな復讐はやりすぎだけどね)

 警察に捕まって、窓をたたき割って逃げ出す主人公。普通、取調室の窓って割れないようにしてあるもんじゃないのかね。まあどうでもいいが。
 この逃亡シーンも迫力があった。社会科見学の子供たち、こんなのに巻き込まれて災難。いや、逆にいい見学になったのかな?

 で、主人公は反撃に転じる。犯人の母親の遺体を盗んじまう。この時、主人公は犯人に遺体を返して欲しかったら金よこせ、と電話するが、犯人の対応が格好良かった。
 電話をスッと主人公の息子に代わり、声を聞かせてから「金はやれん」
 息子の命が惜しけりゃ遺体を返せっというセリフを省略して見事に説明しているシーン。この映画、こういう感じの映像での説明が非常に上手いんだよね。

 んでまぁ、後はサスペンス映画の王道の展開を行く。ラストもきちんとハッピーエンドで終わる。二時間の長さを感じさせない高密度の映画。
 なわけだけど、良い映画だからこそ細かい部分の不満が見える。
 例えば、警察から逃亡後、弁護士の奥さんにかくまわれるが、主人公との関係をもっと序盤から描いといてもらわないと。主人公だって警察へ通報しない確信がある場所へ逃げなきゃいけないわけで、まともにふたりが顔を合わせたのって弁護士が死んだ後だけだったので少々不自然。
 
 他にはラストの犯人が思わず自分の犯行を口走って録音されるのも、ご都合主義的な流だったし、警察が廃屋を囲んでいるというのもこれまたご都合主義。

 あと解決後の主人公と家族の関係。家族がクーラーボックス(?)の中から救出したとき主人公は息子を一番に抱き上げる。が、娘と嫁には一切かまわない。嫁とは仲違いしてるから良いんだけど、娘のことも心配してやれよ。男親だから息子が可愛いのは分かるけどさぁ・・・。
 で、救急車に乗り込んで何故か、嫁が主人公の手を握って関係修復を示唆。何故? 命がけで家族を守ってくれて見直したってことか? それにしてはこれも都合が良すぎる。
 というか家族の離婚調停はあまり効果的に使われていなかったなぁ・・・。

 細かい部分に不満はあるけれど全体としてみれば非常に良くできている。テンポも良く演出は素晴らしい。オススメの一品。

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