ラストタンゴ・イン・パリ


監督:ベルナルド・ベルトルッチ
キャスト:マーロン・ブランド、マリア・シュナイダー、ジャン=ピエール・レオー、マッシモ・ジロッティ
1972年 イタリア、フランス

あらすじ:冬のパリ。中年男のポールは、アパートの空き部屋で偶然出会った若い娘ジャンヌをいきなり犯す。だが2 人は何事もなかったかのように別れる。ジャンヌには婚約者がいた。一方、ポールは妻が自殺したばかりで人生に絶望していた。2人はその後もアパートの空き部屋で会い続け、互いの肉体におぼれていく・・・。

評価 ★★★☆☆


 エロ過ぎてイタリアじゃポルノ認定され公開が中止されたとか。でも、今見てみるとあんまりエロくない。直接的なエロスを描いた場面なんてほとんどない。もっとこう、腰振ったり、アンアン喘いだりってのを見る前は想像してたんだけどねぇ。

 アナルセックスの描写なんかもあるが、これはエロとして描いたわけではなく屈折した男性の精神性と、抗いきれない女性の弱さを象徴させているようで純粋なエロではない。女優の全裸体も頻繁に写されるけれども別に恥じらいがあるわけでもなく堂々としているんでエロさは感じない。
 どうしてこんな映画がポルノ認定されたんだろう?

アナルセックス

 アナルセックスはキリスト教の人にとっては子供の出来ない性行為として、それなりに許容されていると聞いたことがある。だから洋物AVではアナルセックスが多い、と。
 ホントならこの映画のアナルセックスの描写に過度に反応するとは思えないが、どうなんだろう。

 しかしまあ、この映画のオリジナル版は200分だそうで日本で発売されているのは120分バージョン。カットされている八十分に過激な描写があるのかもしれない。そっちを見てみたいけど、200分も時間を割いてまで見ようと思うほどの映画ではないかも。

 監督の親父さん、アッテリオ・ベルトルッチは有名な詩人だそうだ。その血を引いてるのがよく分かる。詩的な映像が満載。
ラストタンゴ・イン・パリ
暗示的なオープニングのイラスト


浮き輪
沈んでいく浮き輪



ふたりの独特の距離感


 思わせぶりで深読みすれば何か意味があるように思える、暗示的な映像。たぶん歓声だけで映像撮っててあんまり意味はないと思うけど。

 登場人物は一癖も二癖もある。どの人物もどこか謎めいていて何考えているかよく分からない。主人公の女。あんな四六時中カメラを回させて映画を撮る男のどこが良いんやら。あっさり別れちまえ、と思うんだけど、女の方は明らかにマーロン・ブランドのさえないおっさんに心惹かれても男と別れようとしない。
 マーロンのおっさんはおっさんで、アパートの中では名前すらも話さない聞かないで、思いっきり現実逃避している。ふたりの関係はこのアパートの中だけ、と。現実の辛い出来事を忘れるための官能で耽美な夢のような場所がアパートだったわけだ。
 ただし、マーロンはラストで、主人公の女を追いかけて自宅まで入っていく。現実逃避であったはずのふたりの関係が現実世界にまで入り込んでしまった。
 対する女はマーロンを撃ち殺してこんな男は名前も知りません、と呟く。明らかにマーロンを現実逃避の世界の人間としてみなそうとしている。
 アパートの中で名前を話したり聞くのを嫌がったマーロンと、逆に何でも聞こうとした女との関係がここで逆転している。

 マーロンは何も聞きたくないふりをして強がってはいたが、本当は女のことを全て知りたかったし自分のことを全て話したかったのだろう。正直に自分の思いを打ち明けることができないのは妻の遺体を前に泣き崩れたマーロンの様子を見れば良くわかる。
 女の方はアパートの中で何度も自分のことを話しマーロンのことを聞いた。
 マーロンからしてみると、自分を受け入れてくれる女性だと思ったのだが、結局アパートの中だけの付き合いだと割り切っていたのは女の方だったというオチ。


女を追いかけるマーロン



 良くできてる映画なんだけど、やっぱりエロが物足りない・・・。

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