静かな生活


監督 伊丹十三
キャスト 山崎努、柴田美穂子、渡部篤郎、佐伯日菜子、大森嘉之、宮本信子
1995年 日本

あらすじ 脳に障害を持つ兄と彼を一生支えようと決心している妹の波乱万丈の日々を綴った伊丹十三監督作品。兄妹の交流を通して人間の生きる力とそれを支える愛情を描く。

評価 ★★★☆☆

 映画全体に漂う作り物感はなんだろう。渡部篤郎の障害者演技然り、母親の不自然な関西弁のイントネーション。佐伯日菜子の不自然な敬語。全ての登場人物のどこか、文学的な台詞回し。佐伯日菜子の自宅も作り物感がプンプン。
 もともと伊丹十三って監督はニヒリズムで現実を斜めから見ているような感覚があるとは思っているが、この映画はその監督の思想を色濃く表してるんじゃないだろうか。

 他人のために命を捨てるような人間はいない。
 作中作の小説の言葉であるが、障害者の渡部篤郎は、妹のために体を張って助けるわけだ。落ちこぼれ、と罵られるような障害者が最も人間らしくない行動を取ったということになる。
 これは人間を愚かな動物として捉え、落ちこぼれと罵られる、一般社会から一種隔離されているような障害者のほうが人間らしくは無いが動物としては優れているということを表現している。こうした伊丹十三の厭世的な思想を表している・・・のかなぁ。

 しかしまぁ、難しいテーマを上手くエンターテイメントとしてまとめ上げたのはさすがだと思う。
 序盤から、障害者と性犯罪をテーマにしようとしている。父親が、障害者の息子が勃起しているのを見てトイレへ連れて行くわけだが、これってトイレで射精させるわけだよな。障害者と性の問題は、色々あるわけだが生々しい描き方だ。だけども、それを深刻ぶらずユーモラスに描いて見せている。

 性犯罪者が近所に現れたと知ると、真っ先に自分の兄を疑ってしまう佐伯日菜子の心情も哀れ。以後の献身的な兄へ対する世話も、兄をすこしでも疑ってしまった贖罪の意味もあるのだろうな。

 ラストのレイプシーン、佐伯日菜子のパンツを見せる所なんかも相変わらず伊丹十三のエロさ炸裂。

 で、この映画最大の見所はなんといっても下水掃除。あれほど見応えのある下水掃除は他にはないだろう。

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