姑獲鳥の夏


監督 実相寺昭雄
キャスト 堤真一、永瀬正敏、原田知世、阿部寛、宮迫博之、田中麗奈
2005年 日本

あらすじ 古本屋の主人にして神社の神主である京極堂こと中禅寺秋彦は、友人の関口からある噂について相談を受ける。雑司が谷の産婦人科・久遠寺医院の娘・梗子が妊娠20ヶ月を過ぎても一向に出産する気配がなく、さらにその夫・牧朗が1年半前から行方不明だと言うのだ・・・。

評価 ★☆☆☆☆

 なんでこんな作品を映画化しようとしたんだろ。だいたい京極夏彦の小説って、映画にするのに向いてないんだよね。
 長ったらしい会話部分だとか、伏線なのかどうなのか分からないシーンの連続だとかで、はっきり言って物凄くテンポが悪い。他の作者が書けば百ページに収まる作品でも、京極夏彦が書けばその十倍近い分量になる有様。もちろん、京極夏彦の筆力のおかげでそれを退屈させず妙な理屈で楽しませてくれるわけだが、それは京極夏彦にしかできない技。他の作家が書くのはもちろん映像化しても、京極夏彦の小説の味は出せないし、単なるテンポの悪い作品にしかならない。
 だいたい小説のストーリー自体もそれほど凄いものではない。姑獲鳥の夏でもトリック自体は肩すかしをくらうような内容。それを凄いように見せつける京極夏彦が偉大なのである。

 こんな京極夏彦だから成立している作品を、他者が、それも映像化しようなんていうのが間違っている。そもそも、姑獲鳥の夏は小説的な技法によってトリックが成り立ってるんだから、映画化なんてのは考えるまでもなく無理だと分かるわけなんだが、無理を押し通して、非道い結果になってしまった・・・。

 この映画では、幻想的な映像にのみこだわっているようである。ストーリーなんて、映画的に脚色なんかほとんどしない。原作そのまんま。そのかわり映像を頑張りました、と。だが、この映像も効果的に使われているとは思えない。なんとなく、独特だなぁと思うぐらい。
 ミステリーとしても失格。謎解きの部分なんて単なる説明、でしかない。提示された謎を解き明かし、いままでの伏線がすべて一本の線に集まるという、ここにカタルシストを感じるのだが、単に一つ一つ謎を説明するだけで、それは決して交わることなく独立してる。驚きなど皆無。そもそも、満足に謎の提示がなされていなかったけどね。

 原作読んでなければ意味が分からない映画だし、原作読んでたらあまりのひどさに怒り出したくなるような映画。安っぽくて古くさいだけの駄作。

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