大停電の夜に


監督:源孝志
キャスト: 豊川悦司、田口トモロヲ、原田知世、吉川晃司、寺島しのぶ、井川遥、阿部力
2005年 日本

あらすじ:クリスマス・イブの夜、突然の大停電に見舞われた東京で、それぞれ悲喜こもごもの12人の男女の思いが交錯する。

評価 ★★☆☆☆

 複数のカップルがクリスマスイブの日、大停電をきっかけに様々な経験する、という群像劇。個人的に群像劇は好みじゃないので、いまいち乗りきれず・・・。
 映像や小道具の使い方なんかは非常にストイックで好感が持てた(特にベースを弾くシーンなんか非常にかっこいい)が、いかんせん停電のせいで暗すぎていまいち映像美が堪能できなかった。その分ロウソクの光が美しさを強調されてたわけなので一長一短なのかな。

 ストーリーも登場人物が多すぎて、ひとつひとつのエピソードが薄っぺらくなってるし、そもそもどの話も不倫が関係しててありきたりだったりする。不倫している夫だとか、服役中の彼氏を待てずに別の男と結婚しちゃう女だとか(これも不倫の一種か)、数十年前の結婚前に恋人と子供を作ったとか、別に家庭の持っている前の恋人が自分のところへやってくるかどうかとか(これも不倫になるぞ)、なんだかワンパターンになっている。
 クリスマスイブが舞台と言うことで色恋沙汰をテーマにしたかったんだろうが、それが陳腐になっている。

 一番興味深かったのは中学生とモデルのエピソード。乳がんのせいで女性の象徴である胸と、モデルとしての仕事を失おうとしてる女性に、衛星マニアの少年の交流は面白そうだったわけだけども、ほとんど深く掘り下げられることもなく映画の中では一番浮いているのが残念。
 
 こうした群像劇はラストシーンにそれぞれのエピソードが絡み合うのが魅力的なんだろうけど、この映画ではちょっとだけふれあうだけで、深くそれぞれのエピソードが交流することはない。ちょっとそれは手抜きじゃなかろうか。

 しかし、この映画最大の欠点は全体の芝居がかった点にある。登場人物全てが、現実ではそんなこと言わねえよ、ってなセリフばかり口にする。特に豊川悦司。セリフや仕草がキザすぎて鼻につく。ストーリーも作り話のように上手くすすむ。
 その象徴が妊婦が電車に閉じ込められて脱出するときのシーン。乗客が自分の服やら靴やら飲み物やらを手渡そうとするわけだが、ちょっとできすぎてる。こんな人の良い奴らばっかりじゃないよ、現実は。この映画にはそうして現実には存在するはずの無いような心温かな人々や物語が当たり前のようにあるのだ。それが作り物感を強めている。
 現代のおとぎ話として楽しめればそれで良いのだろうけれど・・・。

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