ぼくの大切なともだち


監督 パトリス・ルコント
キャスト ダニエル・オートゥイユ、ダニー・ブーン、ジュリー・ガイエ、ジュリー・デュラン、ジャック・マトゥー
2006年 フランス

あらすじ 誕生日に集まってくれた仲間と、「10日以内に親友を連れてくる」という賭けをすることになったフランソワ。だが友人たちはフランソワを親友と思っておらず……

評価 ★★☆☆☆

 非常に軽いタッチの映画。パトリス・ルコント作品といえばどこかシニカルで人間の暗部をさらけ出したり、ドロドロの性欲を芸術的に描いたりするわけだがそういった過去作と比べて非常に軽い。映像やストーリーなど大衆の娯楽向けに作ってる感じがする。

 仕事もできるし、恋人もとっかえひっかえな主人公だが友人がひとりもいない。周囲の人間にからかわれたのに腹が立って、つい友人をお前らに見せてやる、と啖呵を切る。が、友人だと思ってた人間は、向こうは友人だと思っていなかった。で、気の良いタクシー運転手に友人の作り方を教わるわけだが、この一連の流れが非常に漫画的。友達の作り方を書店で求めるが、そんな本を探しているのを周囲の人に聞かれるのが恥ずかしいので、ヒソヒソと店員に聞くが、店員が大声でその本の名前を叫んじゃうとか、講演会で気持ち悪い男が友達になろうと声をしつこくかけてくるとか、非常に漫画チックである。もともとルコント監督は漫画家だったので、そうした経験が生きているのかもしれない。

 フランス映画といえば恋愛物というイメージがあるが、この映画では恋愛を排除している。というか、最初から観客に対して恋愛沙汰は持ち込まないんで期待するなよ、と宣言してる。それが主人公の共同経営者が自分はレズビアンだと告白するところ。主人公に一番近い女性は、主人公を恋愛対象と見ていないということを説明し、関係が発展することはないと仄めかしているわけだ。純粋な友情物として見られるように観客への説明である。
 ただし、この女性は後半部で主人公と友人になりたかったとも告白している。主人公と女性が単なる賭けの敵同士であるとした認識をひっくり返した一種のどんでん返しだろうか。

 主人公、最初から共同経営者の女性に友達になろう、と持ちかけてりゃこんな苦労することはなかったんだよね。女性は主人公と友人になりたかったが、主人公は見向きもせず、タクシー運転手は、主人公と友人になったつもりでいたが主人公に裏切られる。身近な人間ふたりを傷つけている。が、女性に対してのフォローがこの映画内ではほとんどない。ちょっと扱いがひどすぎやしないだろうか。

 フランス映画はやっぱり恋愛が必要なんだろうなぁ。ラストシーン。タクシー運転手と主人公の娘。明らかに恋をしてる。友人の娘と結婚、か。友人に妻を取られた男にとってはちょっと辛いか。やっぱりこの後結婚までは発展しないのかな。

 クイズミリオネア。長々とテレビ番組をほぼそのまま映画に拝借しちゃうってのちょっとやりすぎじゃないか。電話での星の王子さまの一節を読むところなんかは、ちょっとした哲学っぽくてフランス映画らしい。

 しかし、邦題がいまいち。原題は「Mon meilleur ami」直訳すれば「私の最良の友」意訳で「私の親友」といったところか。どうして「ぼく」なんて一人称を使っちゃったんだろう。中年男の友情物語に「ぼく」が不釣り合いで面白いと思ったのかなぁ。フランス映画でこんなタイトルにされるとプロヴァンスあたりの少年の物語と思っちゃうよ。

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