パリ、テキサス


監督 ヴィム・ヴェンダース
キャスト ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー、ディーン・ストックウェル
1984年 西ドイツ・フランス

あらすじ テキサス州にある“パリ”を探して放浪するトラヴィス。失意の中、4年ぶりに戻った家に妻の姿は無く、息子とふたりで捜索する旅に出た……。

評価 ★★☆☆☆

 84年カンヌ映画祭パルムドール受賞作品。非常に評価の高い作品だけども個人的には嫌い。文芸作品が好みでないというのもあるが、主人公の行動に嫌悪感を抱いてしまうのだ。

 この主人公、妻を捨てて消息を絶つのだが、息子は妻に預けっぱなし。この時点で父親失格。で、四年後に放浪中に病院に運び込まれ、弟と出会うわけだが、その時も一言も喋らない。それどころか黙って姿を消そうとする子供じみた行動。最初はミステリアスな雰囲気を醸し出してるが、いい加減見てるだけでも腹が立ってくる。弟はよく怒らないものだと感心。
 自宅へ帰る途中でも、飛行機乗るのは嫌だの、レンタカーは以前乗ってたのじゃなきゃ嫌だのとダダをこねる。いい年した大人のくせになんだ。他人の迷惑を一切考えないエゴイスティックな野郎だからこそ、妻と子供を捨てれたのか。

 弟の家へ居候中は、まあ皿洗いしたりクツ磨いたりとそれなりに気を使っているようなそぶりは見せるが、結局子供と妻を探しに行ってしまう。しかもそんな大事なことを、弟夫婦には一切告げずに、だ。途中、弟夫婦に電話するも自分でしない。息子にさせるほど無責任。妻捜しの途中でも居眠りしてしまう。お前にとって妻捜しはその程度のことだったのか、と思わせる。

 妻がスラム街(?)で働いているのを突き止めると子供を車の中に置き去りにして追いかけていく。置き去り、と言っても窓も閉めさせ鍵もかけさせたりはしているが、こんな危険な場所に子供を一人っきりにしておく神経が分からん。実際子供は車から出てしまっていた。一旦、ホテルに預けるなりなんなりするべきだろうに。

 で、ラストにはまたも息子を妻に押しつけて自分はどこかへ行ってしまう。無責任きわまりない。子供の気持ちを考えたことがあるのか。二人の父親ができて、どう接して良いか分からない状況で、子供なりに本当の父親のことを理解しつつあるときに、また姿を消された。どれほど子供が悲しむだろうか。不憫でならない。
 つーか、弟から借りた金はきちんと返したんだろうな。

 とまあ、この主人公の行動にもの凄く腹が立って感動なんてできなかった。
 もちろん興味深いシーンは多々あった。子供のために父親像を雑誌で探すシーンから、反対側の歩道を親子が歩くシーンまでの一連の流れは素晴らしかったし、序盤の、無言で食事もまともにとらない、睡眠もとらないという、どこか厭世的な雰囲気の主人公には魅力を感じたが、それらの設定がいかされることはなかった。

 弟夫婦の、子供が主人公にとられるんじゃないかという悩みが、深く掘り下げられなかったのも不満。
 そしてラストシーンに子供がためらいもなく母に抱きつきにいくシーン。父親と打ち解けるのにあれだけ時間がかかったのに比べると、映画的なご都合主義が垣間見える気がする。

 淡々とした映画全体の雰囲気には、好感を感じたがそれ以外の部分ではどうも、パルムドールをとるほどの映画だとは思えなかった。

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