夏時間の庭


監督:オリヴィエ・アサヤス
キャスト:ジュリエット・ビノシュ/シャルル・ベルリング/ジェレミー・レニエ

あらすじ:画家だった大叔父の邸宅に暮らすエレーヌが急逝。3人の子供たちに広大な家屋、貴重な美術品が遺され、ジレンマに悩まされる……。オルセー美術館全面協力で製作された家族の絆の物語。

評価 ★★★★☆

オルセー美術館開館20周年企画として美術館の全面協力の下作られた作品。なのに美術館に飾っておくだけの美術品は無意味、というようなことを言っちゃうんだがいいのか、それで。


「家」に対して日本とフランスとでは価値観が違っていると思う。地震が多く、木造のために火災での焼失の可能性の高い日本では、家を建て替えるのにそれほど抵抗はない。むしろ地震で崩壊したときに被害を減らすためになるべく軽い材木で家を建てる。その分崩れやすくはなるが、死者は減る。
対してフランス、というかヨーロッパではそうした自然災害を考慮する必要が無いため、数十年或いは数百年間家を使い続けるのも珍しくない。ために「家」には歴史が詰まっている。親、祖父母、その両親、と家族がそこに住み続け、歴史と思い出が染みついている。日本以上に家を売ることに対して抵抗を持つのはそのためだろう。

フランスに住む長男が家を売るのを渋り、海外に住む長女と次男が家を売りたがったのは、自分たちが歴史を受け継ぐ立場かそうでないか、に依るのだろう。

淡々とした描写で進む映画。特に誰かにフォーカスを当てることもない。強いていうならこの「家」こそが主人公となり、家の周辺で起こる物語が綴られているのだ。

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