フロンティア


監督 ザヴィエ・ジャン
キャスト カリーナ・テスタ、サミュエル・ル・ビアン、エステル・ルフェビュール
2007年 フランス、スイス

あらすじ 国の不安定な情勢に乗じて事件を起こした若者たち。国外への脱出を目指し、国境近くに見つけた宿の扉を開くが……。

評価 ★★★★☆

 血みどろ♪血みどろ♪


 おフランス産スプラッター映画。とにかくフランスは芸術が好きな国。絵画だとか建築はもちろん、ファッションなんかも芸術的。で、映画は第七の芸術と呼ばれている。ちなみにテレビ番組も漫画も芸術呼ばわりされてる。
 だからかは知らないがフランスの映画はどこか気取ったところがあって、この映画も例外ではない。

 最初からいきなりドキュメンタリータッチの暴動シーン。フランスで社会問題化している移民系の暴動を連想させる。で、主人公達も移民系。殺人一家は異常なほどの民族主義者(ナチだけど)。主人公が宿に泊まってからも、移民系だと気付く前と、気付いた後では対応が180度変わっている。このあたり、フランスでの移民に対する迫害という問題を提起しているようである。
 が、単なるスプラッター映画に無理矢理政治的な問題を詰め込もうとしたせいでストーリー上でおかしな所も出てくる。
 異常なまでの民族主義者が移民系の女性に自分の血を引いた子供を産まそうとするところだ。他に子供を産ませるような女性が見つからなかったのかもしれないが頑固そうなオヤジがそんなところを妥協するとはおもえない。娯楽に徹しきれなかったせいで、映画の質が落ちてしまうというフランス映画の悪い癖が出ている。
 しかし、不満点と言えばそれぐらい。他の部分は非常に良くできている。
 特に、殺人一家が典型的な殺人者ではなく、きちんと個性を持たせているのが面白い。
 三男坊のデブや買われてきた少女などは人間的な一面を見せたり、次男坊が長男に対抗意識を抱いたり、母親がひとりで飯食えないような状況だったり(虐待でもされたか?)家庭内でも色々な問題があるのがこの映画の一筋縄ではいかないところか。

 気に入ったのはデブの三男坊。時折見せる優しげな眼差しがカワイイ。オーブン(?)のようなところに閉じ込めて蒸し焼きにしようとするが、あんまりかわいそうなので中から出してやり、苦しまないようひと思いに銃で撃ち殺してあげるほど優しい心の持ち主(優しいか?)
 その三男坊に恋をしている少女。この子が映画にグッと深みを持たせてる。両親が向けにくるのを待つ自分は、自分の子供を殺すことができず坑道に隠す。自分が両親から愛情を受けるかわりに、自分の愛情を子供に注ぐ。この母性愛、素晴らしい。

 グロテスクの描写はやや緩めではあるが、申し分なし。王道だけどひと味違ったスプラッター映画を見たい人には是非お勧めしたい映画。

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